まどろみ

行為には結果が続くけれど、まどろんだ後には何も残らない。

 

一日中動き回った後、身体を流して熱った体で横になる。手足が重たくなって、足の裏がジンジンとし始める。押し入れから出したばかりの布団はひんやりとして心地よいけれど、体の痺れは取れない。

 

シャツのはだけた隙間から、温くなった布団の生地が、しっとりと肌に触れる。目をつむっていると微かな刺激に浸されたような状態になる。瞼の裏と鼻の奥の方で頭蓋骨で囲まれたとりわけ柔らかい肉が渦を巻き始める。

 

例えば、過去の失敗が思い出される。何年も前の出来事だから、ずっと取り返しがつかない。でもそれは関係なくて、考え事や、心配事、記憶、なんでもいい。竹林をさらさらと通り抜ける春風や、夕陽に照らされて街を見下ろす山なみが通り抜けていく。なおも手足は痺れている。そんなふうにして、過去あったことに拘り、反芻している。

 

空を飛ぶ夢をみることがある。身体が地面をはなれて泳ぐように飛ぶ。まだ、夢は見ていない。反芻、反芻、反芻。記憶が記憶であるためにはその場を離れるわけにはいかない。ひと所で渦巻いているイメージでいる。

 

明晰な頭で考えていても、少しずつ逸れていく。人の手で身体中撫でられている気がする。記憶の中、ある人はその名前のまま別の人となり、またある人はその顔のままで別の人になる。ずっと心配だったことは、ごつごつとしたセメントと小石の塊になった。まだ、考えている。

 

いま私は川辺で水切りをしている。