人情

喜怒哀楽にうまく分類できない感情の構成がある。具体的な場面でしか作用しない心の動きを人情と呼ぶ。

駅で、通りで、電車で、飲食店で、会社で。多くの人と同じ場所を占めていても、人情味を感じない。みんな服を着て虫みたいに見える。

 

大学の授業では、一文一文、音読して、翻訳して、自分の意見や要約を言いながら読んだ。当たり前だけど一冊の本を授業で読み終わることもない。入学してから卒業するまで、全体の10分の1も読めていないはずだ。卒業する誰も最初から最後まで読めないし、終わらない授業。

でも、そうやって読んでいると、本から人情を感じるようになる。

 

翻って、これだけ多くの人がいる世の中に、人情が存在しているのかわからなくなる。僕なんかも、側から見たらそうだ。

読書しない人を見てると不安になる。

でも、たぶん、特に若者は、音楽や漫画、あとはYouTubeから人情を得ているんだろう。本を読むより音楽を聴いたほうがいい理由はそれだ。そうしなければ、きっと現代の人情を感じられない人になってしまう。